改正個人情報保護法とパーソナルデータの利活用COLUMN

2016.07.07
マクロミル総合研究所
研究員 村上智章

改正個人情報保護法の成立

IT技術の飛躍的な進歩により、大量のビッグデータのうち、個人の行動・状態などに関するパーソナルデータを集めて分析し活用する環境が整ってきた。IT技術の激的な発展に伴って、企業内には顧客の購買履歴データやwebログ等の多様なパーソナルデータが蓄積されるようになった。しかし、ビッグデータを利用した新産業・新サービスを創出しようとなると、個人情報として扱う範囲のグレーゾーンが広すぎていたため、なかなか新産業・新サービスの創出には至らなかった。

そして、プライバシーの保護とパーソナルデータの利活用の両方を実現するための「改正個人情報保護法」が2016年5月20日に成立した。

このような状況を踏まえて、改正法では、個人の氏名・住所・生年月日のほかに、特定の個人を識別できる「個人識別符号」が含まれるものも個人情報として扱われることになった。この「個人識別符号」は、指紋認識データや顔認識データなど、身体の一部の特徴をデジタル化したものや、免許証番号や旅券番号や個人番号(マイナンバー)など特定の個人を識別することができるものも含まれる。

データ収集の自動化の流れ

日本マーケティング・リサーチ協会の加盟社は「マーケティング・リサーチ綱領(2010年5月27日改定)」を順守する義務がある。そして、リサーチ綱領の第7条には
一. 調査対象者に利用目的を明示した上で取得され、利用目的を超えて利用されないこと
一. 情報の取得または二次処理が、調査目的に照らして、適切で関連性があり、その範囲を超えて利用されないこと
一. 取得又は二次処理された情報が、調査目的の達成に必要な期間を超えて保有されないこと
と定められている。ここに示されている“個人情報”は、改正前の個人情報保護法にもとづいて書かれており、調査対象者が存在しているアンケート調査やインタビュー調査を想定している。

既に企業のマーケティングに活用されているデータはアンケート調査だけではなく、WEB上のアクセス履歴やSNS上のクチコミデータの分析や投稿された画像の分析にまで及んでいる。確かに商品に対する認知や上市前の購入意向などの意識データはアンケート調査でなければ収集できない。

しかし、購買や移動などはカード決済や改札記録、GPSなどのアクチャルデータにより正確に、かつ全数データが入手できるのである。そして、昨今はIoTが注目されており、モノとインターネットが繋がることによって、ますます生活者の行動記録が自動的に収集されようとしている。こうしたアクチャルデータの収集は、既存の調査会社だけでなく、金融機関やポイントサービス、鉄道会社など様々な企業が既に(業務情報として)収集している。そして、今回の個人情報保護法を受けて、様々な企業が保有するデータを交換しあうデータエクスチェンジ市場が盛り上がっていくことが予想される。

急いては事を仕損じる

個人情報保護法が改正されたが、法の全面施行は2017年以降になる。また、詳細な運用ルールにおいてはまだ定まっておらず、日本マーケティング・リサーチ協会においても今回の個人情報保護法の改正を受けて、「個人情報保護法ガイドライン」の改定を進めようとしている段階である。

2013年にJR東日本がSuica乗降履歴データの情報提供サービスを開始しようとしたところ、多くの利用者から批判を浴び、データ提供を中止せざるを得なくなったのは記憶に新しい。ある企業が十分な理解を得ないまま、新サービスと銘打って事業展開しようとすると、それが業界全体にとっての停滞にもつながりかねない。まだパーソナルデータの利活用方法については手探り状態であるからこそ、パーソナルデータを取り扱う企業は法の精神に則って、より慎重に安全策を講じるとともに、情報提供者の理解を深めていくべきである。

村上智章執筆者プロフィール

マクロミル総合研究所 研究員
村上智章(むらかみ・ともあき)
株式会社マクロミル
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