人口減少時代のアクセスパネルを考えるCOLUMN

2016.04.12
マクロミル総合研究所
研究員 村上智章

マクロミルでは主に、「マクロミルモニタ」という自社で管理するリサーチ専用のアクセスパネルに対して、インターネットを介したアンケート調査を依頼している。今回のコラムでは総務省統計局が2016年2月26日に発表した『平成27年国勢調査』の人口速報集計結果を受け、ネットリサーチのアクセスパネルの展望について考察したい。

人口減少社会の到来

平成27年に実施した国勢調査の速報集計によると、国勢調査史上初めて、わが国の総合人口が減少したそうだ。人口減少時代に突入するということは経済活動においてもインパクトがあり、少なからず多くの企業が生き残りを掛けた事業戦略の見直しを余儀なくされるであろう。ネットリサーチは今でこそマーケティング・リサーチの一手法として一般的に用いられているが、長い国勢調査の歴史に比べてみればその歴史は浅い。

マクロミルは2000年にインターネットリサーチ調査会社として創業し、マーケティング・リサーチ業界においてその市場を開拓してきた。そして、事業の拡大とともにアクセスパネルの会員数も増加させてきたが、インターネットリサーチが成熟してきた近年は、その増加は緩やかになり、2015年10月時点では約118万人となっている。
そして、人口減少社会に転じた今、アクセスパネルの会員数も減少に転じてしまうのだろうか?

アクセスパネルはまだ若い

インターネットリサーチのアクセスパネルに登録するには、PCだろうとスマートフォンだろうと、インターネットを利用できることが大前提となる。下図は2003年以降のマクロミルモニタの年齢構成比推移である。50才以上の有効モニタの割合は2003年ではわずか8%であったが、コーホート移動によって2015年では16%へと倍増している。このように、ネットリサーチのアクセスパネルは時代とともに年齢層が上昇しているものの、一般人口と比較すればまだまだ若い世代で構成されており、当面は人口減少の影響を受けることはないだろう。

マクロミル有効モニタの年齢構成の推移

国立社会保障・人口問題研究所では日本の総人口は2060年に8,674万人になると推計している。さらに参考値ではあるものの2110年には4,286万人になると推計している。100年後に日本の総人口が3分の1になったときでも、マクロミルが現在の有効モニタ数を維持できる保証はできないが、100年後のマーケティング・リサーチ業界がどのような変貌を遂げているのかは想像できない。

アクセスパネルの価値と将来展望

近年では流通系のポイントサービスや流通系のID-POSといったビッグデータを活用した顧客分析が注目を集めている。これらの会員規模とネットリサーチのアクセスパネルの会員数を比較すると、ネットリサーチのパネル数はどうしても貧相に見えてしまうかもしれない。しかし、ビッグデータは決済処理やセンシングにより、自動的にログデータとして把握できるデータを有効活用していることになる。結果としての実態やバスケット分析のように要因間の相関関係は把握できるが、ビッグデータではそれは何故?という理由を伺い知るができない。アクセスパネルを用いたネットリサーチは、マーケターや研究者が知りたい視点、消費者の心理実験ができるということにこそ価値がある。

また、アクセスパネルに登録していても、ネットリサーチ会社からのアンケートの依頼数が少なすぎれば、すぐに存在を忘れ去られてしまう。逆に会員数に対してアンケートの依頼数が多すぎても、調査の学習効果による回答バイアスといった問題も出てきてしまう。良質でアクティブなアクセスパネルを維持していくためには、会員数と調査の依頼数のバランスが必要である。ただ、アクセスパネルの規模だけを謳っていても、生きたパネルを保有していなければ全く意味がない。日頃のアクセスパネルのメンテナンスもまた、パネルを保有している企業の欠かせない大切な仕事の一つである。

しかし、これから本格的に人口が減少を迎えていくとなると、悠長なことはしていられない。単独のアクセスパネルだけでは調査対象者が見つからないケースも出てくることは容易に想像できる。限られた資源(調査協力者)を最大限活用するためには、複数社のアクセスパネル間で相互利用できるリサーチパネル・ネットワークの構築を真剣に考えていく必要があるだろう。また、アクセスパネルに囚われないリバーサンプリングの採用や予測技術の組み合わせなど、これまでにない柔軟性の高いリサーチ手法の研究開発が求められてくるであろう。

村上智章執筆者プロフィール

マクロミル総合研究所 研究員
村上智章(むらかみ・ともあき)
株式会社マクロミル
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