「こんな調査票は嫌だ」シリーズ #3 自由記入設問の今後COLUMN

2016.03.17
マクロミル総合研究所
研究員 鳥居 慧

スマートフォン時代を見据え、これまで「設問文の文字数を制限すること」「マトリクス設問のありかた」を提唱したが、今回は自由記入設問(以下、FA設問)について問題提起をしたい。

FA設問が形だけになっていないか

FA設問を回答するときには、脳内の記憶を呼び戻して、自分の表現したい内容を言語化し、回答欄にテキストデータとして入力しながら文章化するという一連の手続きが必要になる。このためFA設問は、選択肢がプリコード化されたSA設問に比べて回答負荷が遥かに大きい。そして、理由や感想を求めるFA設問を繰り返して質問してしまうと、回答者は思考停止に陥ってしまい、「特にない」という価値のないデータになってしまいがちである。

近年、アンケートに回答する際のデバイスは、PCからスマートフォンへと移行しつつあるが、基本的にPCでできることはスマートフォンでもできる。当然、WEBアンケートの文字入力はスマートフォンでもできる。そこで、長い文章をタイピングするときに、皆さんはPCとスマートフォンのどちらが入力しやすいだろうか。少なくとも昭和生まれの私は文字入力に関してはPCの方が圧倒的に楽である。
では、なぜスマートフォンで長い文章を入力しづらいのだろうか? その理由を私なりに考えてみた。

  • タッチパネルでのフリック入力の操作の不慣れ
  • 画面の視認範囲が狭いため、文章全体の繋がりが見えづらい
  • 文字種別(日本語→アルファベット→記号→数字)の切り替え操作
  • コピー・アンド・ペースト、カット・アンド・ペーストの操作性の悪さ

現時点でのネットリサーチの主たる回答者はPC世代の人間である。PC世代の人でもスマートフォンで文字入力が全くできないというわけではないだろうが、文字入力に億劫になっており、思っていることや感じていることの全てを回答欄に入力してくれないのだろう。
一方、スマートフォン世代の人は、スマートフォンでの文字入力に抵抗はないかもしれない。しかし、たとえ文字入力に何の抵抗がなかったとしても、過渡な期待は禁物である。

ショートセンテンス化・非センテンス化が進行

インターネットの接続端末がPCやガラケーからスマートフォンへとシフトする中で、コミュニケーションの方法はEメールからLINEやメッセンジャーといったコミュニケーションアプリへと移り変わってきた。こうしたツールでは、プッシュ通知により小気味の良い相互の会話を成立させるようになっているため、既にショートセンテンスの習慣が根付いてしまっている。
またスタンプやFacebookの「いいね!」、あるいは写真や動画など、コミュニケーションの種類が多様化してきている。SNSにおいても2015年秋に『Instagram』が『Twitter』のユーザー数を超え、文字から写真・動画へという非センテンス化の方向にも流れを象徴していると思う。こうした時代の流れとともに、日常生活の中で自分の考えを整理して文章を書くという機会が減ってきており、アンケートの中のFA設問では深い理由や感想を聞き出すことがより困難になるだろう。

オンライン調査における通常のアンケートは選択肢を回答してもらうことに主眼が置かれた、いわゆる“Asking”である。しかし、その調査のやり方を続けていたとしてもマーケティングに対して有益な示唆を得ることが難しい。むしろ、プリコード化できないインサイトを得たいのであれば定量調査とは切り分けて、SNSからの”Listening”や、MROCなどのコミュニティサイトやファンサイトで交わされた情報の中からテキストマイニングを行っていく道も探るべきである。当社が昨年リリースした『ミルトーク』というサービスも、これからの時代に即した自由回答を得ることができるリサーチ手法である。

FA設問もさらなる進化を!

ここまではアンケート調査ではFA設問には期待が持てない、むしろ別の手法で自由回答を回答してもらうべきだと述べてきたが、SNS上には必ずしもマーケッターが求めている情報が存在するとは限らないし、コミュニティサイトの運営には時間も労力もかかる。そうそう直ぐにはアンケートからFA設問をなくすこともできないだろう。
私はFA設問に悲観的なことを述べてきたが、現状のアンケート調査におけるFA設問の回答品質を向上させる余地は残っていると思っている。その一つとして過去の調査票設計を参考にして、ほぼ定型化されたフォーマットで意見や感想を聞くのではなく、もっと知りたいことの意見を引き出すためには、“調査票に工夫”が必要だと思う。
例えば、下図Q1のような『あなたはこの商品に対して満足したのはなぜですか?』という設問に対して従来のFAを1つ置くのではなく、Q2のように前後の文言を示すことで、質問者がどのように回答してほしいと意図しているのかをイメージできるようになるし、調査終了後のコーディング作業もしやすくなるだろう。

回答形式1回答形式2

また、視点を少し変えれば、犯罪心理学の事情聴取のテクニックも採り入れてFA設問を設計してみるのも面白いし、スマートフォンの文字入力をサポートするためにマイクを使った音声入力という方法も考えられる。さらには写真や動画を投稿してもらい表情解析によって、そのときの感情を数値化するという試みもあるだろう。
いずれにしても何かしらの工夫・アクションを取らない限り、FA設問の未来は明るくならない。当社が率先して、よりよい方法を提案していきたい。

鳥居 慧執筆者プロフィール

マクロミル総合研究所 研究員
鳥居 慧(とりい・けい)
株式会社マクロミル
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