「こんな調査票は嫌だ」シリーズ #2 マトリクス設問に物申すCOLUMN

2015.10.30
マクロミル総合研究所
研究員 鳥居 慧

前回のコラムでは「設問文の文字数を制限せよ」というタイトルで、スマートフォン時代を見据えて設問文の長さを制限したり、短い設問文でも回答者に伝わる文章力をつけること・無駄なことを記載しない勇気を持つことが大事だ、という内容を書かせてもらった。今回はスマートフォン時代を見据えた回答タイプや聴取方法について書いていく。

マトリクス(表形式)設問の実態

今日のネットリサーチでは当たり前となったマトリクス(表形式)設問であるが、これが非常にやっかいなものになってきたなと感じている。

そもそもマトリクス設問とはなにか?念のため補足をすると、図1のように、聴取したい項目を1問として聞けるという設問形式である。マトリクス設問には大きく2種類あり、単一回答をまとめたもの(左側)と複数回答をまとめたもの(右側)がある。

【図1】マトリクス設問の画面イメージ(左:単一回答 右:複数回答)

単一回答複数回答

現在、マクロミルを含む多くのネットリサーチ会社の料金体系は「サンプルサイズ×設問数」で積算される仕組みになっている。マトリクス設問は5項目だろうと10項目だろうと20項目だろうと、同じ1問として扱われる。だから、なるべく多くの情報を効率よく聴取しようしたい人にとっては、とてもお得感のある設問である。また、同じ内容を続けて質問するのであれば、質問文を改めて表示することなく前の項目と比較しながら続けて回答できるため、回答する側においても回答しやすいという場合もある。

だからといって、マトリクス設問を多用した調査票を設計することはあまりお勧めできない。次に紹介するマトリクス設問の見落としがちな視点・デメリットは是非知っておいて欲しい。

見落としがちな視点・デメリット

見落としがちな視点・デメリット・・・それはまさに「回答負荷」である。既に申し上げたとおり、マトリクス設問は1問扱いとしている料金体系である以上、回答者への謝礼も原則、1問分しか付与されていない。性別や年齢といった単一質問と、数十項目に及ぶ複数選択のマトリクス設問を回答しても得られる謝礼は同じである。中には100項目を超えるマトリクス設問もあり、回答者からも「これで1問なのか・・・」という辛辣な意見を頂戴することがある。

しかしながら、回答者側になってマトリクス設問を回答してみると、そうした意見にも納得していただけると思う。試しに項目数が26個のマトリクス設問のテスト画面を用意してみたので、下の画像をクリックして是非ご確認いただきたい。

どうだろうか。まじめに回答するほど、次第に面倒くささを感じてしまわなかっただろうか?
延々とマトリクス設問が続くと項目そのものを読み飛ばしてしまう人や、巨大なマトリクス設問を見ただけで回答を中断してしまう人が出てきても不思議ではない。このようにマトリクス設問を多用するほど質問数は少なくなるというメリットはあるものの、回答精度の劣化は否めない。

私は精度がよいアンケート調査とは、回答者が質問文を正しく理解し、ストレスなく自分自身の意見を反映できていることが必要条件だと考えている。調査を依頼してくださるクライアントの皆様にも予算の都合があることは十分承知しているが、せっかく貴重なお金を使って調査をするのであれば、詰め込みすぎずに回答しやすい調査票にしたほうが結果としてマーケティングの意思決定にも役立つのではないかと思う。

今われわれが行うべきこと

マトリクス設問は紙のアンケートが主流であった時代からも存在していたが、紙面という物理的な制約があった。紙のアンケートでは文字のフォントサイズにも視認できる最小のサイズがあっただろうから、自ずとしてマトリクス設問の項目数や選択肢数には上限が設けられていただろう。しかし、ネットリサーチにおいては画面をスクロールすることができるようになり調査票の自由度が高まったことから、マトリクス設問の項目数や選択肢数の上限が大幅に緩和されてしまった。

そして、PCの普及とともに発展してきたネットリサーチもまた急激な変化を迫れられている。若年層を中心にスマートフォンで回答しているモニタが急増しており、もはやネットリサーチはPCだけで完結する時代は終わりを迎えつつある。

図2はマクロミルで実施した社内調査で、各質問の“平均回答所要時間”をPCとスマートフォンのデバイス別に算出したものである。簡単な単一回答や複数回答ではあまりデバイス間に回答所要時間の差は見られないが、複数回答のマトリクス設問ではPCとスマートフォンで大きな乖離が生じている。これはスマートフォンでは選択肢を表示させるために縦に横にと画面をスクロールさせる所作が発生するので、PCよりも回答所要時間が長くなるのは当然だろう。このようにマトリクス設問が増えれば増えるほど、スマートフォン回答者の回答負荷はPC回答者よりも遥かに大きくなることがわかる。

【図2】デバイス別平均回答所要時間(分)

【図2】デバイス別平均回答所要時間(分)

ネットリサーチのマトリクス設問には異常なまでに肥大化してしまったものもあるが、スマートフォン時代が到来した今だからこそ、マトリクス設問をコンパクトにする絶好の機会だと思う。また、マトリクス設問だけでなく調査票全体についても「あれもこれも聞いておこう、あとでデータを広く見られるように」という思考から脱却し、「仮説を考え抜いた上で本当に必要なことのみを聴取するのだ」という意識を働かせて、調査票の軽量化を目指すべきではないだろうか。

最後に、調査関係者の皆様にお願いしたいことがある。調査画面を確認する際は、PCからだけではなく、是非スマートフォンからも確認していただきたい。そして、スマートフォン回答者からはどのように見えるのかという自らの体感を通して、調査票を設計していただきたい。

鳥居 慧執筆者プロフィール

マクロミル総合研究所 研究員
鳥居 慧(とりい・けい)
株式会社マクロミル
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