PC限定は過去の時代、ネットリサーチもマルチデバイスへCOLUMN

2015.07.29
マクロミル総合研究所
研究員 村上智章

スマートフォンの急速な普及

マクロミルが創業した2000年はまだ全国的にブロードバンドが普及する以前で、その当時、インターネットに接続する情報端末はほぼパソコンだった。当時はまだNTT Docomoのi-modeが発売されたばかりで、携帯電話がインターネット端末に進化するとは想像している人は少なかったのではなかろうか。しかし、たった15年(特にこの5年)でインターネットを取り巻く環境は激変を遂げた。 2012年以降のスマートフォンの急速な普及に伴い、インターネットに接続するデバイスのほか、生活行動までもが大きく変わった。私自身もスマートフォンを持つようになってからは、自宅のパソコンを起動する回数が減っているという自覚がある。総務省の統計調査においても、モバイル端末でのインターネット利用時間が長くなっているという実態が明らかになっている。図-1は総務省が平成24年から毎年実施している「情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査」の主要機器別のインターネット利用時間を加工したものである。

図-1 経年[平日1日] PC/モバイル インターネット平均利用時間(年代別)

これによると平成25年から平成26年にかけてPCでのネット利用時間は55.6分から30.9分へと約25分も短縮している。一方、モバイル端末の利用時間は経年で着実に伸びており、全年代でも平成26年に初めてPCのネット利用時間を上回った。平成26年のネット利用時間のうちモバイル端末が占めるモバイル端末の時間占有率は、10代では86%、20代では71%にまで高まっている。 若年層をターゲットとしたあらゆるインターネット関連事業において、モバイル端末を決して無視できない状況である。また、モバイル占有率は50代までの年代で伸び付けており、今後もこのモバイルシフトの流れは当分の間続きそうである。 そのような時代の流れに呼応するかのように、マクロミルのアンケートもスマートフォンで回答する人の割合が高まりつつある。図-2は2015年3月にマクロミルが実施した自主調査の中で、「今、あなたが回答している情報端末はどれですか」という質問をしたときの回答結果である。この調査は回答デバイスの制限を設けずに実施したものであるが、実に回答者の3割が「スマートフォン」を選択していた。

図-2 マクロミル自主調査のおける回答デバイス構成

驚かれる人もいるかもしれないが、我々はまずこの現実を真摯に受け止めなければならない。先ほどの総務省の統計調査にもあったとおり、若年層ではモバイル端末でのインターネット利用は常態化しており、スマートフォンでアンケートを回答することは特別なことではないのである。 私を含め、ビジネスでネットリサーチに携わっている人たちはパソコンで調査票を作成し、パソコンで調査画面を確認しているので、回答者もパソコンで回答するのだろうという先入観を持ちすぎてはいないだろうか。少なくともリサーチャーはパソコンだけで画面を確認するのではなく、スマートフォンで回答するときに、どのような画面が映っているのかを確認する必要がある。

回答デバイスに依存しないリサーチを

マクロミルがクライアントから依頼されるアンケートの中には100問を超えるアンケートもある。そのような調査は、スマートフォンで回答することは非常に負荷が高いため、回答デバイスをパソコンだけに限定することを推奨している。また、定点調査においては過去の調査がパソコンで回答させていたからという理由でパソコン限定にする場合もある。 しかし、回答デバイスをパソコンに限定してしまうと、スマホは持つがバソコンを持たない人、いわゆるスマホネイティブ層にアンケートを依頼することができなくなってしまう。図らずともスクリーニング条件として、デバイス保有が加わり偏った調査結果を導いてしまっているのだ。 マーケティングリサーチの多くの目的は、市場全体の動向を把握し、マーケティング戦略における有益なインサイトを得ることである。ほとんどのマーケティングリサーチは世の中全般の消費者を対象にしているのだから、スマホネイティブ層は決して無視してはいけない存在なのである。

新たに登録するアンケートモニタを中心に、スマートフォンでアンケートを回答したいというニーズが高まってきている。しかし、一方で長年務めてきているアンケートモニタからはスマートフォンではアンケートは回答しにくいので、PCで回答したいという要望も根強くある。 PC限定にしたネットリサーチが時代に合わなくなったからといって、すべてがスマートフォンに移行したというわけでもない。生活者を知るためのリサーチならば生活者の側に降り立って調査をすればいいだけのことであり、PCだろうとスマートフォンであろうとデバイスを限定する必要はないと思う。 最近発売されるスマートフォンの画面は拡大され、「Phone」と「Tablet」を組み合わせた“ファブレット”という造語も作られてきている。一方、 PC側もモバイル性能を高めて小型軽量化されており、デバイス間の境界線が曖昧になってきている。 こうしたデバイスの進化とともに、人々の暮らし方やインターネットの利用のしかたは常に変化している。未来永劫ネットリサーチを一つの固定したデバイスで行う必然性はないし、それを続けることは不可能だと思う。先日、 Apple社から「Apple Watch」が発売されたばかりだが、もしかしたら10年後のネットリサーチは腕時計型端末の中で行われているのかもしれない。

執筆者プロフィール

マクロミル総合研究所 研究員
村上 智章(むらかみ・ともあき)
株式会社マクロミル
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